手作り石けんの疑問&質問
やさしく学べる、手作り石けんの基礎知識。
コールドプロセス製法(CP製法)の石けん作りは、材料を知り、手順を理解すれば、どなたでも始められます。
このページでは、作り方のコツや安全な扱い方、失敗の原因と対策など、石けんづくりにまつわる素朴な疑問にお答えします。
初心者でも作れる?コールドプロセス石けんの基本ステップ
コールドプロセス製法(CP製法)は、手順を理解すれば初心者でも十分に作れます。
基本の流れは次のとおりです。
- ①オイルを計量し、湯せんで温める。
- ②苛性ソーダ水を作り、冷ます。
- ③温度が38~42℃前後で揃ったら、混ぜ合わせて攪拌する。
- ④とろみ(トレース)が出たら型に流し、一晩保温。
- ⑤翌日型から出してカットし、3~4週間熟成させる。
特別な技術は不要です。苛性ソーダの取扱いに気をつけ、きちんと計量し、焦らず丁寧に進めれば、石けんができます。
水道水でも作れますか?
石けん作りには精製水を使うのが理想です。
水道水やミネラルウォーターには、カルシウムや鉄などの金属イオンが含まれており、反応の過程で「金属石けん」を生じて泡立ちが悪くなったり、色が濁ることがあります。安定した仕上がりを目指すため、精製水を使いましょう。
型には何を使えばいいですか?
牛乳パックなどの紙製、木製、シリコン、プラスチックなどの型(モールド)があります。
牛乳パックは、手軽で保温性があり、初心者におすすめです。
tecoloでは、紙製のペーパーモールドをご用意しています→
初めての人に、おすすめの油配合やオイルミックスは?
オリーブ油70%、ココナッツ油20%、パーム油10%の配合がバランスよく仕上がります。泡立ち、保湿、硬さのすべてが安定しており、初心者にも扱いやすい配合です。
【参考例】手作り石けんオイルミックス
→【エコノミー版】手作り石けんオイルミックス500g
ポマスオリーブ油350g(70%)、ココナッツ油100g(20%)、パーム油50g(10%)
*トレースが出やすく型入れまでの時間が短く作りやすい。
→マルセイユ石けんオイルミックス500g
ピュアオリーブ油360g(72%)、ココナッツ油90g(18%)、パーム油50g(10%)
*型入れまでの時間は少しかかりますが、質のよい石けんが出来上がります。
苛性ソーダって危険?安全に使うための3つのコツ
「手作り石鹸は危険?」と聞かれることがあります。
CP製法の手作り石けんでは苛性ソーダを使うため、そのような質問になるのだと思います。
苛性ソーダは強いアルカリ性をもつため、取り扱いには注意が必要です。
ただし、基本的な安全対策を守れば、安心して使うことができます。
まず、換気の良い場所で作業してください。
次に、ゴム手袋や保護メガネを着用し、肌や目に直接触れないようにします。
そして、「水に苛性ソーダを少しずつ入れる」こと。
これらを守れば、過度に怖がる必要はありません。
正しい手順で扱えば、安全に石けん作りを楽しめます。
苛性ソーダの代わりになるものはある?
苛性ソーダは、コールドプロセス製法(CP製法)の石けんを作るうえで欠かせない材料です。
「代わりのもの」は存在しません。
石けんは「油脂+アルカリ=石けん+グリセリン」という化学反応によって作られます。苛性ソーダがないと、この反応は起こりません。
ただし、完成した石けんには、苛性ソーダは残りません。
反応の過程で完全に中和され、人体に安全な石けんに変わります。
仕組みを理解すれば、安心して作業できます。
手作り石鹸には苛性ソーダを使わないMPソープや手ごね石鹸などもあります。ただし、コールドプロセス製法の石鹸とは使用感・洗い心地が異なります。
苛性ソーダ水を作るとき、どんな容器が安全ですか?
苛性ソーダを溶かすときは、耐熱ガラス製かポリプロピレン(PP)製の容器を使います。
金属やアルミの容器は化学反応を起こす恐れがあるため使用できません。
プラスチックでも「耐薬品・耐熱」と表示されているものなら使用できます。
苛性ソーダはどのくらい保管できますか?
湿気を避け、しっかり密閉して保管すれば1年ほどは問題なく使えます。
空気中の水分を吸いやすいため、開封後はすぐにしっかりとフタを閉めてください。
乾燥剤を入れたジプロックなどの袋に容器を入れておくと、より安心です。冷暗所で保管してください。
失敗しやすいポイントと、その防ぎ方
CP製法の手作り石けんは、うまく固まらなかったり、固まりすぎたりすることがあります。
原因の多くは、温度や湿度などの環境面、混ぜ方や油の配合にあります。
オイルと苛性ソーダ水の温度を38~42℃程度に揃え、トレースが出るまでしっかり攪拌するのが基本です。オリーブ油100%の石けんは固まりにくいため、ココナッツ油やパーム油を少し加えると安定します。
白く粉をふく“ソーダ灰”の正体と対処法
完成した石けんの表面が白くなっている場合、それは「ソーダ灰」という現象の可能性があります。
ソーダ灰は、石けんの表面が空気中の二酸化炭素と反応してできるもので、石鹸自体の品質には問題ありません。
防ぐには、型に流し込んだ後、表面にラップをかけておくと効果的です。
すでにできてしまった場合は、乾いた布で軽く拭くか、薄く削り取ればきれいになります。見た目に少し違いが出ても、そのままでも安心して使えます。
トレースが出ないのはなぜ?よくある3つの原因
「トレース(とろみが出始める瞬間)が出ない」という悩みはよくあります。主な原因は次の3つです。
- ①温度が低すぎる
- ②オリーブ油など固まりにくい油の割合が多い
- ③攪拌が不十分
オイルの種類やレシピ(配合内容)により、型入れまでの時間は変わります。
石けんの生地を20分間かき混ぜた後、すぐにトレースができる場合や12~24時間、もしくは24時間以上かかる場合があります。
また、気温・湿度などの環境によって左右され、オイルと苛性ソーダ水を混ぜ合わせる温度や混ぜるスピードによっても影響されます。
もしも、トレースが出ない場合には、生地を再度、湯せんし、少し温めます。そのまま1~2日間置いて様子を見、ゆるくトレースが出たら、型入れします。
苛性ソーダ、水などの分量が間違っていなければ、いずれは固まります。
[Point]
- はじめの20分間は、休みなく、しっかりと混ぜ続けることが大切です。
ブレンダーを使用する場合は、10秒混ぜる→休む、10秒混ぜる→休むを繰り返します。 - 石けん生地の温度(適温:38~42℃)が下がらないようにします。温度が高いほうがトレースが出やすくなりますが、油にとっては、あまり良いことではありません。
トレースが出すぎた。
型入れ出来そうなら、ゴムベラを使い、型に押し込みながら入れます。
無理そうなら、ゴム手袋をし、手で丸めたり、お菓子のように型抜きをしてもよいでしょう。
色が変わったりムラになるのはなぜですか?
使用するオイルや香料の種類、混ぜ方、保温環境によって変色することがあります。
自然な酸化による色の違いは問題ありません。成分が均一に混ざるよう、しっかりと攪拌するように意識します。
石けんが型から抜けない。
型の端をひっぱってみて、すんなりと剥がせそうにない場合は、時間をかけながら少しずつ剥がしていくか、型ごと1時間ほど冷凍庫に入れ、冷やして固めることで簡単に綺麗に型からはずすことができます。
ただ、この方法は、急激に冷やすことで石けんの熟成の進行を妨げることになるので、材料のオイルや石けんの質には、あまり良いことではありません。
その時々の状況で臨機応変に対応してください。
ちゃんと使えるかな?
石けんの生地を型に入れてから、1か月間の熟成期間が終わると使用できます。
まずは手を洗ってみましょう。ピりッと皮膚に刺激がなければ大丈夫です。また皮膚の柔らかい部分(二の腕の裏側)に石けんの泡を塗って、24時間様子をみます。
かゆみや赤みなどの気になる反応がなければ、大丈夫です。また、ペーハー試験紙で、アルカリ度を確認してみます。
熟成した石けんは、だいたいPH9~10あたりで落ち着き、肌に使える弱アルカリ性の状態になっていると安心です。
出来上がった石けんの使用期限はありますか?
保管方法やお住いの地域、気温や湿度によって変わりますが、冷暗所で保存した場合、半年~1年を目安にお使いください。
すぐに使わない石けんは、酸化を防ぐためにも薬包紙やワックスペーパーなどで1個づつ石鹸を包み、
ジプロックなどの袋や缶などの密封できる容器に入れて、冷暗所で保存するとよいでしょう。
オリーブ油、ココナッツ油、パーム油の役割のちがい
CP製法石けんの使い心地は、使う油の種類と配合で決まります。
- オリーブ油:保湿力があり、やさしい洗い上がり。
- ココナッツ油:泡立ちと洗浄力を高める。
- パーム油:石けんを固くし、型くずれを防ぐ。
この3つをバランスよく配合することで、泡立ち・保湿・使いやすさのすべてを両立できます。
レシピを調整することで、自分の肌や季節に合った石けんを作ることができます。
中和法と鹸化法、どう違うの?
石鹸を作る方法には、大きく分けて「中和法」と「鹸化法」があります。
中和法は、あらかじめ分離した「脂肪酸」と「アルカリ」を短時間で中和して作る、工業的な方法です。
大量生産に向いており、一般的な市販石けんの多くはこの方法で作られています。
一方、鹸化法は、植物油とアルカリを反応させて石けんにする方法です。
手作り石けんでよく使われるコールドプロセス製法(CP製法)では、じっくり時間をかけて反応を進めるため、石けんが自然に持つグリセリンが残ります。
このグリセリンが、洗ったあとも肌のうるおいを守る働きをしてくれます。
どちらが良い悪いではなく、同じ「石鹸」でも作り方の違いが、そのまま使い心地の違いになります。
手作り石けんのグリセリンはどこから生まれるのですか?
油脂と苛性ソーダが反応する過程で自然に生成されます。
このグリセリンが、手作り石けんの保湿力を支えています。
手作り石けんは界面活性剤ですか?
はい。石けんも界面活性剤の一種です。
ただし、合成界面活性剤と違い、植物油脂から作られた手作り石けんは生分解性が高く自然に戻ります。
手作り石けんと市販石けんのちがい
コールドプロセス製法(CP製法)の手作り石けんと市販石けんの大きな違いは、保湿成分であるグリセリンが残っているかどうかです。
市販石けんの多くは、大量生産や安定性を目的として、製造の過程でグリセリンを分けて他の用途に活用したり、必要に応じて香料や安定剤が加えられる場合があります。
一方、CP製法では反応で生まれたグリセリンがそのまま残るのが特徴です。生成されたグリセリンが残ることで、洗い上がりがやわらかく感じられることがあります。
どちらが良い・悪いではなく、製法や目的の違いにより使い心地が変わります。
手作り石鹸は違法ですか?
自分や家族が使うために石けんを作ることは、法律上まったく問題ありません。
家庭で趣味として作ったり、お楽しみいただけます。
手作り石鹸を販売したい。
現在の日本の法律「薬機法(旧薬事法)」では体に使う目的での石けんは化粧品とみなされ、ご自身でお楽しみいただくのは、何の問題もありませんが、それを不特定多数に販売する場合には、化粧品製造販売業などの認可を取得する必要があります。
もちろんバザーやインターネット等で化粧品(体に使う目的)で販売する場合にも薬機法(医薬品医療機器等法)の規制を受けることになります。
一方、体に使う目的ではない石けんは「雑貨」扱いとなるため、薬機法の規制を受けずに販売することは可能です。その場合、体に使えるような表現や効能効果の表現などは一切禁止されていますので、くれぐれも注意が必要です。
また、雑貨として販売する場合は「家庭用品品質表示法」で定められている規定を守る必要があります。
作る時間が、自分をととのえる時間
石けんを作る作業は、集中しながらも不思議と心が落ち着く時間です。
材料を計り、温度を合わせ、静かに混ぜていく。
その一つひとつの工程が、丁寧な時間を取り戻すような感覚になります。
カットした石けんを並べて待つ間、少しずつ色や香りが変わっていくのを見るのも楽しみです。
出来上がった石けんを手に取ると、「自分の手で作ったものが暮らしの中にある」ことの嬉しさを感じます。手作り石けんは、ものを作る喜びを思い出させてくれます。